• 膠彩、絹布
  173.6×180.6cm

高台にある庭から、田園とその先に広がる穏やかな海を眺めている少女。水平線まで遮るもののない景色のなかで、白地に赤の着物が引き立ちます。帯は軽く蝶々結び、黒髪を首のあたりで括った気負いのない装いからは、そこが彼女にとって日常の場景のようです。何を想い何を見ているのか、表情が見えない彼女のまなざしに同調したとき、私たちの視線も絵の奥に向かうことに気づきます。 丘人自身はこの作品について「小金井の庭に伊豆の風景を組合せた、架空想像の作品の第一作とも云う可きか」と書き残しました。実在する二つの場所を組み合わせて創り出した空間は、叙情感に満ちた画家にとっての理想郷だったかもしれません。