[音声ガイド]
真っ白な大理石のまわりにお米が寄り集まっているようにも、そこから湧き出しているようにも見えます。重そうな大理石に比べると、米の山は少し力を与えただけで崩れてしまいそうです。 この大理石のかたちは、作品タイトルのとおり家のようですが、それだけでなく、キリスト教の聖遺物箱やイスラム教の墓にも似ています。 作者のライプは死について、肉体からの解放であり、全く別の何かに変わろうとしていることだと言います。とすると、逆さにしたら波間に浮かぶ舟のようでもあるこの家は、大理石とお米の組み合わせに、無機物と有機物、生命の始まりと終わり、住まいと旅とを重ねながら、現世とあの世を行き来しているのかもしれません。医学を学んだ後に美術に転じたライプの作品は、私たち人間が他の生命と関わり合って生きながら、同時に死を迎えているということを、静かに感じさせてくれます。