Collection

コレクション

冨田 溪仙 (とみた・けいせん)

[1879 - 1936 ]

吉野彩雨 [1926年]

  • 墨、膠彩、絹布
    128.3×42.0cm

[音声ガイド]

タイトルにある「吉野」とは、奈良県の吉野山のことです。険しい山の裾野から頂上に向けて桜が順に開花し、山肌を薄紅色に染める景色が人々を魅了してきた、古くからの名所として知られています。 山岳信仰の地でもある、吉野山をこの作品では、縦長の画面に景色を重ねるように描いています。真ん中の人家を境に、画面の上と下で、雰囲気や表現が異なります。画面の上半分の山の輪郭は、雨に淡くかすみ、遠くの世界のように見え、ともすると畏怖の念さえ抱かせます。 一方、画面の下半分は近くの景色です。木立は濃い墨でくっきりと、そして山道の脇の家並みや、蓑をかぶって山を下る人や馬は、少ない線と色で軽やかに描かれ、身近な生活の息づかいが感じられます。 聖と俗の二つの顔を持つ吉野の山を、霧雨で桜色ににじむ情景として描がいた、画家の粋なセンスを感じ取れる作品です。

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