[音声ガイド]
9枚の左広がりのカンヴァスに、作家本人の名前と基本色の名が右広がりで記されています。作家名のパネル以外は同サイズで、色の名前とは無関係に、同じ色で均一に塗られています。そこで鍵となるのが「M y(私の)」という言葉です。 徳冨は「我々が普段、共通して「赤」という名詞で呼び合っている色も、もしかすると、個人の内側ではそれぞれまったく別の色かもしれず、それもまた、自分の与えられた「名前」と同じように、個人の属性に過ぎないのではないか」と述べています。いわばここでは、何かを感じ取るときに否応なく顔を出す「私」というフィルターが作品化されているのです。 普遍性を持つはずの芸術とあくまで個人的な知覚や認識。作品からは、その両極の間で苦闘しながらも、なお芸術に向き合った一個人である作家、徳冨の姿が浮かび上がります。