[音声ガイド]
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描かれた竹薮の奥に、何かが潜んでいませんか。その姿は篠竹(しのべだけ)に隠れていますが、鴨が2羽うずくまっています。容易に分け入れないほど蔓が絡まり、竹の細い線はそぼ降る雨を想わせて、まるで身を隠している野鳥の気持ちを表しているようです。薮のなかで雨露をしのぐ鴨たちを、息をころして見つめる画家の目に、同調するような感覚さえ覚えます。 1980年代前半、40歳を過ぎた頃の竹内は、木の陰に身を潜める鳥や小動物に自己の内面性を反映させた抒情的な作品を数多く描きました。《昨日の雨》は、画面全体に細やかに色を挿し重ね、日本画における具象と抽象、近代と現代の境で、存在感を失わない強さを秘めた作品です。