Collection

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下村 観山 (しもむら・かんざん)

[1873 - 1930 ]

春夏秋冬十二景 [1910年代 (大正初期)]

  • 膠彩、絹布
    33.7×27.6×6.6cm

美人と舎利 [1909年 (明治42)]

  • 絹本着色
    各126.0×50.7cm(双幅)

[音声ガイド]

作品名にある「舎利(しゃり)」とは人骨のこと。右の軸には小袖に打掛をまとった下げ髪の女性、左の軸には宙づりの骸骨(がいこつ)が向き合うように描かれています。しかし、二つの軸を同じ高さに掛けると、互いの視線はかみ合わず、何やら意味ありげです。 女性が何者なのかは、その装いにいくつかのヒントがあります。胸には高貴な身分を表す桐の文様、打掛の円い文様は御所車(ごしょぐるま)を思わせます。円の中に描かれているのは河骨(こうほね)という植物の葉ですが、それは葵にとても似ており、そこから、この女性を『源氏物語』の「葵上(あおいのうえ)」に登場する六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)と考えることができます。 ところが画家自身はこの作品について何も書き残していません。筆の表現が豊かな日本の古典と西洋の写実性をこの作品で対に描きたかったのかもしれませんし、生と死の無常観も読み取れます。それぞれのモティーフは飾り気なく描かれていますが、見れば見るほど不思議で奥深い作品です。

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