[音声ガイド]
作品名を知らなければ、これが外国の風景とはわからないかもしれません。描かれているのは城や門で有名なパリ近郊の町シャンティイですが、ここでは石造りの建物が連なる一風景として描かれています。褐色の落ち着いたトーンでまとめられた画面は、様々な筆遣いによって緻密に構築されているものの、道や家並みの輪郭や奥行きはどこか曖昧です。 ヨーロッパの街を描き、その文化から生まれた油絵具を使いながら、坂本はこの作品では遠近や陰影を表現する西洋の技法をほとんど用いませんでした。どちらかというと古い東洋の絵のように場を俯瞰して全体をとらえようと試みているこの作品は、風景画でありながら抽象性を帯びて見えます。