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急速に工業化が進む19世紀末のドイツに設立されたAEG(アーエーゲー)社は、20世紀初頭には、世界最大の電気機器メーカーの一つになります。このころ、AEG社は、はじめ画家を志し、建築やグラフィックの領域で活躍していたベーレンスにデザインを依頼します。工業製品のデザインがいかにあるべきか未だ定かではなかった時代のことです。ベーレンスは、日々の暮らしに芸術性の高い道具をゆきわたらせ、社会全体の趣味を改善し、時代の様式をつくりあげることを目指しました。 1909年にベーレンスによってデザインされた電気湯沸かし器は、かたち、素材、表面の仕上げ、サイズ、それぞれに3つの選択肢があり、それらを組み合わせた30種類が商品化されました。このやかんは、旧来の道具に新しい機能を融合し、共通のパーツを組み合わせて商品を展開する、今日の家電や自動車といった大量生産品の先駆けといえます。