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異なる顔料を練り込んだ複数の粘土を重ねて、ぎゅっと押して湾曲させたり、テーブルに叩きつけたり、大胆にカットしたりして作られた形は、隆起する大地のようにも、また肉の塊のようにも見えます。一瞬で作られたような勢いを感じる一方で、粘土同士の入り組んだ絡まり合いをみると、どうやら別々の方向から順々に力が加えられているようにも思われます。しかし単純そうにみえて、目で辿るだけでは、その制作の手順を読み取ることはできません。まるで、遠く離れた時代の地層が折り重なって、いま目の前に現れたかのようです。 しかも、中身のぎっしり詰まった土の塊を半年かけて乾燥させ、収縮することも見越して均質に焼き上げるには、熟練の技術をもった職人との協働が不可欠です。この彫刻には、焼き物という別の表現、別の技術による生産のプロセスが含まれているのです。
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小花柄の布に不思議な形の和紙が貼ってあり、ところどころに別の布が敷いてあったり、重ねてあったりと入り組んでいるのが分かります。直線とも曲線ともいえない独特な輪郭線や黒い線は、服飾雑誌の付録の洋服型紙にある無数の線からランダムに選ばれたものです。 型紙とは、厚みのある人体にあわせて考えられた形を平面へと分解したものです。つまり、抽象のようでありながら非常に具体的で具象的な性格を持っています。岡﨑は、先行する作家たちが取り組んだ、一つの形を反復展開するという方法にかわり、型紙を使うことで、固有の形の生成を試みたのです。 服飾に関わるこの作品には、美術で軽視されてきた「マイナー・アーツ」を重視する岡﨑の志向が端的に表れているともいえます。