[音声ガイド]
岡崎和郎の作品は、一貫して「補遺」という独特の概念から成り立っています。「補遺」とは、見落とされてきた何物かをおぎなうこと/ものを意味します。岡崎の作品は、小さな補足を加えることによって、外から内を、あるいは部分から全体を攪乱し、揺さぶりをかけるのです。 〈HISASHI〉は、岡崎を代表する作品シリーズです。このタイトルは、家屋の庇に由来しています。ここで少し考えてみましょう。今、私たちは建物の内部にいると認識しています。ところが、壁に取り付けられた〈HISASHI〉と対峙した瞬間、私たちがいる場所が建物の外部へと変化したように感じはしないでしょうか。これは〈HISASHI〉という「補遺」が生み出す謎のごく一部。その不可思議さは深まるばかりです。