Collection

コレクション

奈良 美智 (なら・よしとも)

[1959 - ]

Through the Break in the Rain [2020]

  • アクリル、カンヴァス
    220.0 x 195.0 cm
  • ©NARA Yoshitomo, 2020

[音声ガイド]

大きな正面向きの顔がこちらをまなざしています。作品の正面に立って向かい合ってみましょう。しばらくながめているうちに、だんだんと顔の輪郭がぼやけて動き出すように見えたり、さまざまに色彩が浮かび上がったりしてこないでしょうか。そのうちに、はじめ人の顔に見えていたものが、もしかしたら違うものを描いているかもしれない、そんなふうにも思えてきます。 作家の奈良美智は1980年代から人の姿を描いてきました。それは子どもの姿のように見えますが、かならずしも子どもを描こうとはしていないようです。むしろ、やわらかい状態、これから変化していく可能性、言葉を介さない感情ややりとり、そうした心持ちへの扉のようにこの作品はあるのです。その扉は、”Through the Break in the Rain”、つまり「雨の止み間に」いっとき現れる青空のように、ひとことでは言い表せない心もようにつながっているのかもしれません。

Girl on the Boat [1994年]

  • 彩色、木
    52.0×15.0×30.0cm
  • ©NARA Yoshitomo, 2018

[音声ガイド]

大きな頭に比べて、首元や足は細く、縦長の小舟に対して、いかにもバランスが悪そうです。実際、手に取って床に置いてみると、倒れてしまわないか、いささか不安になるほどです。 さて、今にも沈みそうなこの小舟に乗って、少女はどこに行こうとしているのでしょうか。彼女の視線の先にあるのは、はるかな未来ではなく自らの舳先です。小さなキレツやノミ跡が残る表情は、傷つきやすい孤独な心情を表しているかのようにも見えますし、うつむいた瞳はどこか鋭さを感じさせます。 奈良美智は1980年代末から、小さく、そして弱く見えるものが内に秘める感情を大切に、身近なもので自分のできることから始める、パンク・ロックのDIY精神をもって制作を続けてきました。この作品も捨ててあった木材を用いているそうです。

Dream Time [1988年]

  • アクリル、カンヴァス
    116.7×90.9cm
  • ©NARA Yoshitomo, 2018

[音声ガイド]

画面の下方には「故郷からこんなにも遠く離れて」との文字が書かれています。湾曲した地平の遠くには火のついた小屋が、そして手前には大きく箱型の家のようなものから伸び出るようにひとりの人物像が描かれています。彼あるいは彼女は、片手に長い棒を持ち、その先から小さな炎が出ています。それはちょうど画面右の月と対応しているのか、画面をぐるりと取り囲む暗闇を照らそうとしています。 人物像、家、天体、そして絵筆のような灯(ともしび)、これらは奈良の以降の絵画にも繰り返し描かれるものです。愛知県立芸術大学で学んでいた奈良が、ちょうどドイツのデュッセルドルフに渡ろうとするころに描かれたこの作品は、のちの奈良の作品ともつながりながら、新しい世界に踏み出そうとするときの、不安と勇気をとどめているようです。

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