[音声ガイド]
鉄の棒が1,380℃の高温のバーナーで削ぎ落されたものです。高熱で削り取られた鉄の棒は、その熱を放散しながら痙攣(けいれん)するような動きを繰り返し、ゆるやかに湾曲していきます。作家の制作の痕跡がこの緩やかなカーブとして現れています。 この熔断という行為には、たとえば木をのこぎりで切るときのような手ごたえがあるわけではありません。作者の言葉です。「熔断というのは、身体的な物理的感覚で心地がいいとかいうことじゃなくて、神経で切ると言った方がいい。それは別の言い方をすると、自分の死に対する恐怖に平行に付き合うということです。あれは幾ら切っても変化しない。そのままです。何キロやっても同じなんです。とにかくそれと平行にいく」。 手ごたえのないまま、緊張し続けなくてはならない。この特異な制作手段を村岡は自らに課していました。