この映像作品は、ギリシャ神話の花の妖精クロリスが西の風の神ゼピュロスに乱暴され、その償いとして花の神フローラへと昇格されるエピソードから始まります。それが次第に、男性同士の愛をめぐる神話、その神話に取材したモーツァルトの詩劇、そしてクロリスにまつわる歌曲を作曲したレイナルド・アーンの物語へと展開します。そして沖縄に駐在する米軍基地のドラッグクイーンの語りにつづき、最後は彼女が歌曲「クロリスに」を歌って物語は終わります。 ミヤギは、様々な時代の神話や芸術作品、男性間のラブストーリー自身の個人的なエピソードなどを織り交ぜ、そこに新たな物語をつくり上げることで、男性と女性、加害者と被害者、アメリカと日本、沖縄といった「境界線」や「隔たり」について静かに問いかけ、揺さぶるのです。
