[音声ガイド]
三木富雄は1962年から亡くなるまでのあいだ、様々な耳を制作し続けました。「なぜ耳を制作するのか」と問われた三木は「意味はない」と答え、後年は「耳が私を選んだ」と答えていたといいます。 あるべき場所から切り取られた耳は、複雑な曲線と凹凸からなる巨大な物体として迫ってきます。鋳造による継ぎ目すら、なにか意味ありげな印象を与えます。しかし「耳は耳でしかないという悲しいユーモア」を、巨大化されたこの耳は示しているのです。 なお、人間の内奥へと繋がる「内耳(ないじ)」は、1965年頃から現れるようになります。