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大きな二本の角、そして顔のない頭部、王妃を抱え込むように長く伸ばした右腕と後ろに駒を隠した左腕。不気味さとともにユーモアも感じさせる表現です。エルンストは、彫刻というものは最もシンプルで最もプリミティブな芸術であり、さまざまな形を作っていると、そこから擬人化の遊びが始まるということを語っています。 シュルレアリスム(超現実主義)の作家らしく、エルンストは夢と現実、この世と彼岸、日常と非合理の境をさまようような存在をつくりだしていますが、全体の印象はあくまでも平穏です。異様さと同時に愛らしさをも感じさせるこの不思議なイメージは、チェスの駒を擬人化しようとするエルンストの遊び心から生まれたものなのでしょう。
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まずは、タイトルにある子供と馬と蛇を探してしまうでしょう。異様な姿ながら画面の上部を占める馬はすぐに分かります。そのからだをなぞっていくと、胴体の下、馬の胸を支えるように手を添える人らしき姿に気づきます。さらに、その足元に目をやると、 大小3匹の蛇が描かれています。 全体としてはなんとも不可思議な表現となっています。描かれた個々のモチーフは意味を失っているようです。画面にはグラッタージュ(絵具を厚塗りしたカンヴァスの裏に凹凸のある物体を置き、こするように表面の絵具を削ぎ落す技法)が用いられていて、偶然の要素が取り込まれています。それによる予期せぬ効果が画面に多様性と緊張感を生み出し、幻想的な世界をつくりだしています。