[音声ガイド]
1964年に「オブジェを消せ」という啓示を受けた松澤宥は、物質を介さず言葉だけで表現を行う観念芸術を始めます。以後、松澤の芸術的実践のほとんどは、言葉と朗読を含むパフォーマンスに限られていきます。正方形の大理石が9枚並べられた《白鳥の歌》は、方眼用紙に手書きした松澤の言葉による作品と同じく、密教曼荼羅(金剛界)の構造になっています。この作品でも、言葉とともに作品を眺めることで、鑑賞者の内に生じる観念が重要になってきます。広い池に浮かぶ白い大理石は、「観想」へ誘うための標です。広がる池の前に立ち、ひとつの清い観念を頭の中に描いてみましょう。 この九枚の白き石盤の中に白き球を観じそをあわれ死 に臨める白鳥としてここに白鳥の歌を聞けよ 第一公案 白鳥の歌は何声なりや 最終公案 人類ハ 松澤宥(1922 ~ 2222)