クラブチェア ( ワシリー ) [デザイン:1925年 (マルセル・ブロイヤー)、 製作年:不詳 (スタンダード = メーベル社)]
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細いスチールパイプの構造体に、カンヴァス地の座面、背もたれ、肘掛けが張られています。重厚なクラブチェアの骨組みだけをなぞった外形は、浮遊するように軽やかです。スチールパイプの使用は、軽くて強く、曲げることができ量産も可能な自転車のハンドルにヒントを得ています。当初は溶接による組み立てでしたが、量産しやすく、分解して輸送も容易なビス留めに変わり、1926年にはブロイヤー自ら「スタンダード家具社」を設立して生産にも関わりました。 ブロイヤーは、この椅子を「見た目も物質の使い方も、私の最も過激な作品。最も非芸術的で論理的、最も居心地が悪くて機械的」だと言い、将来的には私たちが、物資の重さから解放された「弾力のある空気の柱」に座ることまでをも夢想しました。 「ワシリーチェア」の通称は、この椅子を称賛した抽象画家カンディンスキーにちなんで後年つけられたものです。