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ロンドンのテムズ川の河岸。雨に濡れた路面や橋が街灯の光を反射し、霧の街らしく全体に淡くにじむような印象があります。灯りのともる露店には、コートを着込む人々の姿。つめたい光とあたたかな光、それぞれの色彩が湿気を帯びた空気と混ざり合い瑞々しく漂うようです。 挙母村(現・豊田市)出身の牧野義雄は、19世紀末にイギリスへ渡ります。彼はロンドンの街や人々を描いた風景画と、そこでの生活を記した随筆で一躍その名を馳せました。 牧野はイギリスの代表的な風景画家であるターナーの作品を見て感銘を受けたといいます。瑞々しく曖昧に描かれた大気と光の幻想的な印象には、牧野がターナーの作品から受けた影響をじゅうぶんに自らのものにしていることがうかがえます。
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街灯の光が霧に乱反射し、建物の輪郭や遠近感があいまいになる夜の街に、エロス像のシルエットが印象的に浮かび上がります。ロンドンのピカデリー・サーカスは、いくつもの街路が合流する昔も今もにぎやかな場所で、この作品にもコートに身を固めた人々や馬車が行き交う20世紀初頭の様子が描かれています。 牧野義雄は拳母村(現・愛知県豊田市)出身の画家、随筆家です。19世紀末にロンドンに渡り、人や街を叙情的に描いた作品で一躍有名になりました。牧野はロンドンを愛し、とりわけ日常を覆い隠し幻想的な景色を作り出すこの街のを好みました。 この作品は、ロンドンの魅力を紹介する本に口絵として掲載されました。牧野が「霧の画家」として認められた記念碑的な作品です。
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