[音声ガイド]
全体に褐色系で描かれているこの作品で、最初に視線が向かうのは白い襟や袖口ではないでしょうか。大きな襟は若さを引き立て、まっすぐに鑑賞者を見つめる瞳とともに少女を印象づけます。 前田寛治は1922年から約二年半のパリ留学中に訪れた多くの美術館や展覧会で、古今の西洋絵画を目の当たりにします。帰国後は質感や量感、実在感を重視したレアリスムを追究し、詩的で個性豊かな作品を遺しました。 前田にとって身近な人々は重要な題材の一つでした。椅子に腰をかける半身像も、前田はたびたび描きました。この作品では弟子の一人をモデルにしていますが、少女の面差しは、画家の妻あい子を写しているといわれます。