[音声ガイド]
後脚がなく、スチールパイプが床から背もたれまで一続きになった形が、この椅子の最大の特徴です。カンチレバー式の椅子は、1926年にオランダ人建築家マルト・スタムが先に考案しました。これに触発されたミースは、直角の脚の構造をU字型に変更することで、洗練した見た目に加え、弾力のある空気に座っているかのような感覚を生み出すことに成功しました。そして、座ればしなるこのデザインで特許も取得したのです。 この椅子の原型MRが最初に紹介されたのは、1927年の住宅展覧会「ヴァイセンホーフ・ジードルング」の折です。モダニズム建築の粋を集めた展示は注目を集め、カンチレバー式の椅子が広く知られるきっかけにもなりました。 その後、MRは高さや座面の大きさの違い、肘掛けの有無などバリエーション展開し、MR534は、トーネット社によって製造販売されました。