[音声ガイド]
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まっすぐ筆で引かれた線は、上から下へ向かうにつれて絵具がかすれ、最後は見えなくなります。それを30回ほど繰り返すことで出来あがる画面からは、作者の身振りや息遣いを見て取ることができます。それはまるで緊張みなぎる書道の修練のようです。 韓国で生まれ育った李は、幼いころから書や水墨画、老荘思想といった東洋の文化を身に着け、留学先の日本大学では西洋の哲学を学びます。その後美術作家としての活動を始めると「アルガママの世界との出会い」を唱え、1970年頃の日本美術の動向である「もの派」を牽引しました。 作家が一筆ごとに画面に線を引いているところを想像してみてください。そこには、絵画と書、西洋と東洋、面と線といった、対立するようで関わりあう、容易には分かちがたい関係が現れているのです。