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大きなテーブルのうえに水をたたえた朱塗りの皿が8枚。天板は中央に向かってゆるやかにくぼんでいて、そこに張られた水に皿が浮かんでいます。じっと観察していると、かすかな波や、水の上で器がゆれるところを目にすることもあるでしょう。 ≪作業台-七人と一人の食卓≫と題されたこの作品は、小清水漸が手掛けた「作業台」シリーズのひとつです。作業台という無骨な響きのとおり、大きくて厚い天板を彫り込んだ痕跡が窺えます。同時に、天板のうえの水に生じている浮力や張力、さらには「七人と一人の食卓」という謎めいたタイトルも、この作品の一部といえるでしょう。小清水は作業台というかたちを採ることで、作品と私たちの世界とを地続きにしようと試みたのかもしれません。
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タイトルのtetrahedron(テトラヘドロン)は三角錐という意味。鉄のテーブルのような平たい面にひとつの三角錐が飛び出ていて、それをひっくり返したようなかたちの窪みが4つあります。作品をぐるりと一周してみましょう。じつは5つの三角錐はまったく同じかたちなのですが、角度によって異なる見え方を示しています。 作品の下の部分を見ると足も鉄でできていて、上の部分と一体となっています。小清水漸はこの作品を皮切りに「作業台」と呼ばれるシリーズを発表してきました。天板の上でもののかたちや量感、質感を捉えなおすかのような制作方法は、彼が若いときにかかわった「もの派」の活動に根差しているのかもしれません。しかし、作業台というわたしたちの生活と地続きの存在でありながら、ひとつの独立した作品でもあるというのは、この作家独特のものだといえるでしょう。