[音声ガイド]
小さなモニター画面の中心に、小さな黒い塊がうごめいています。目を凝らしてみると、全身タイツ姿の二人の人物が組み合ってレスリングをしているようです。そうと分かれば、編集で時おり早送りされる緩急のある動きに、思わず笑いを誘われますが、一方で、コントラストの強調された発光する白い空間からは、無菌室のような抽象的な印象を受け、寒々しさを覚えもします。 低解像度のこの映像は、実は監視カメラによって撮影されたものです。画面に小さく写る、具体的な特性を欠いた二人の姿は、一方的に見られる存在でしかありません。そして、監視カメラの持つこの構造そのままに、私たちは、今ここで、小さな二人を圧倒的な力の差をもって眼差すことになります。 ユーモアとその先に生じる不気味さ、違和感こそが、小林の作品を特異なものにしているのです。
