[音声ガイド]
加藤翼は、巨大な構造物を参加者と共に作り上げ、それをロープで引っ張るアート・プロジェクトを国内外の様々な場所で展開してきました。 これはマレーシアのボルネオ島で取り組んだプロジェクトです。ここには、難民の子孫であるが故に国籍を持たない人々が暮らす村があり、彼らの家は常に政府から強制撤去を強いられています。作家は、彼らが住むバラックのような構造体を村の人たちと共に作り上げ、「引き起こして、倒す」プロジェクトを行いました。強制退去で家が壊されても、その廃材を運び出し、移動した先でまた新たに家を建てる。こうした営みを延々と繰り返す彼らのほとばしるエネルギーと逞しさが、この映像には捉えられています。
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映像に登場する2人は何をしているのでしょう?追われる者と追う者?あるいは追いかけっこのゲームをしているようにも見えます。永遠に交わることがない2人の追走劇。追われる者も追う者も相手が目に入っているのか、入っていないのかさえはっきりしません。 この場所はマレーシアのボルネオ島。作家の加藤翼は、この地域をリサーチする中で、難民の子孫であるが故に国籍を持たない人々が多く暮らしていることを知ります。「国籍を失うことは、まるで人の不可視化、非実体化を意味しているように見えた」と作家は語っています。ここに登場する2人のうちのひとりは、無国籍、つまりはどの国の書類のうえにも存在しない透明な人物を表しているかのようです。