[音声ガイド]
加納光於は版画の実験的な表現を追究したことで知られます。加納の初期作品のシリーズでは、虫とも植物のかけらともみえる不思議なものたちが画面にひしめいています。10代のころに植物学者の助手として触れた、顕微鏡で見る極小の世界が発想の源とされます。しかし、細やかな表現でありながらどこにも存在しない異形の姿は、加納が植物や動物だけでなく、天文・気象・海洋そして金属の特性を自然から学び、様々なかたちに変容させたものといえるでしょう。 加納が使用した技法インタリオはイタリア語で、図像の部分だけを凹ませた凹版(おうはん)を意味します。1950年代末以降、〈燐と花と〉〈星・反芻学〉などインタリオによる多くの連作を発表しました。