[音声ガイド]
ほの暗い青や茶色を背景として、黒い輪郭の有機的な形態が浮かんでいます。深海をただ よう生物のようにも見えるでしょう。ミロがシュルレアリスム(超現実主義)の作家で あったとことを思うと、夢や無意識の世界が描き出されていると感じるかもしれません。 ただ、ミロ自身は「幻想的な魅力や色彩の装いをすべて剥ぎ取ったような芸術を追究し続 けていました」と語っています。 実は、ミロはこの作品の構想を練るためにコラージュを制作していて、そこに貼り付けら れたのは鍋やカップ、丸椅子、タオルハンガーなどのイラストです。日常にある形態を少 しずつ変化させ、それらの間に均衡が成り立つ一点へと到達するまでの試行錯誤。そうい う創造的なプロセスこそが、ミロの実践しようとしていたことのようです。