Collection

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ジャン・アルプ (じゃん・あるぷ)

[1887 - 1966]

灰色の上の黒い形態の星座 [1937年]

  • 木に着色
    80.1×61.1×3.7cm

[音声ガイド]

灰色の夜空を背景に、有機的な形態の星々が浮かんでいます。それはまるで銀河の中から生まれ出た星が、その成長の過程でさまざまに姿を変容させているようにも見えます。万物が生まれ来る源となる星の誕生。まさにアルプによって生命が生み出されています。しかし、光り輝いているはずの星が、なぜか暗い色調です。既成の芸術を否定し、無から新たなものを生み出そうとするダダ運動を経験したアルプの芸術観の表れでしょうか。彼は次のようにも語っています。「私たちは自然を模倣することを望まない。模造するのではなく、直接産み出したいのだ」。自然が万物を生み出すように、自身も芸術作品を創造する。とすると、芸術家が自然と一体となることがアルプの本望であったのかもしれません。

ひと、ひげ、へそ [1928-29年]

  • 木に着色
    79.9×79.3×9.0cm

[音声ガイド]

アルプの作品に用いられる有機的なかたちには、生物との類似が見て取れます。それは、「芸術とは植物に実を結ぶ果実のように、あるいは母親の胸に抱かれた子供のように人間の中で実を結ぶ果実である」というアルプ特有の芸術観の表われでしょう。 この作品において柔らかい曲線で表現された人物は角のような大きな耳をもち、顔いっぱいにひげを蓄えています。それはどことなくユーモラスな感じを与え、まるで身体のどこかをつついたら別の形態へと姿を変えてしまいそうです。頭の上に浮かんだ白い丸は、身体から飛び出してしまったへそでしょうか。さまざまな形態が生成し、変容していく自然に共鳴しつつ作品を制作するアルプの心情が伝わってきます。

ひげ-帽子 [1923年]

  • リトグラフ、紙
    46.0×36.0cm

[1923年]

  • リトグラフ、紙
    46.0×36.0cm

へそ [1923年]

  • リトグラフ、紙
    46.0×36.0cm

へそ-びん [1923年]

  • リトグラフ、紙
    46.0×36.0cm

ひげ-時計 [1923年]

  • リトグラフ、紙
    46.0×36.0cm

泡だて器 [1923年]

  • リトグラフ、紙
    46.0×36.0cm

数字の8 [1923年]

  • リトグラフ、紙
    46.0×36.0cm

7 アルパーデン [1923年]

  • リトグラフ、紙
    7枚組

[音声ガイド]

タイトルの「アルパーデン/arpaden」とは、作家によるドイツ語の造語で、直訳すると「アルプすること(複数形)」といったところ。では、「アルプする」には、いったいどうすればいいのでしょうか。作品を見てみると「帽子」から「ひげ」が生えていたり、ひとのすがたかと思いきや「泡だて器」だったりと、機械を含めた「もの」と「ひと」がユーモラスに組み合わされています。アルプはそうして、男性の象徴的な部位である「ひげ」や、生命の根源である「へそ」を、そして大自然の「海」を日用品や機械と重ねたり切り離したりすることで、第一次世界大戦を招いてしまった西洋文明の人間中心主義に警鐘を鳴らしています。かわいらしくシンプルなかたちを用いて。これこそが「アルプすること」なのです。

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