Collection

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狗巻 賢二 (いぬまき・けんじ)

[1943 - 2023]

作品 92-1 [1992年]

  • 油彩、カンヴァス
    56.5×41.5cm

[音声ガイド]

白い画面を凹凸のある斜めの線が横切っていて、カンヴァスの左と下の縁には庇(ひさし)のように絵具がはみ出しています。少し時間をとって、この作品がどのように制作されたのか想像してみてください。 じつはこの作品、白い絵具で塗った画面を先の尖った道具で左下から右上へと引っ搔いて、その線に沿って全体に絵具を塗っては乾かし、また引っ掻く、その繰り返しでできています。それを60回ほど。絵具が乾くのにだいたい1週間かかるというから、この白い画面には短かくとも1年あまりの時間が堆積しているといえるでしょう。こうした制作の手順を、画面を繰り返し傷つけ、撫で続ける行為と読み替えると、傷つけることと癒すことといった身体的かつ心理的な身振りにも思えてきます。しかし、重ねられた絵具の白の陰影にはそうした俗世的な読みを寄せ付けない超然とした印象があります。

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