Collection

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今村 紫紅 (いまむら・しこう)

[1880 - 1916 ]

大井川 [1913年]

  • 膠彩、絹布
    136.0×56.0cm

[音声ガイド]

描かれているのは江戸時代に東海道の難所として知られた、国と国の境を流れる大井川の光景です。ふんどし姿の川越え人足や、装束も渡り方も様々な旅人たちが表情豊かに描かれ、渡し場の活気が伝わってきます。川の流れは上から下へ、白波を立てながら画面の外まで大きく弧を描き、作品に躍動感をもたらしています。  今村紫紅は最初に、歴史画を得意とする松本に学びました。そこで模写や写生の重要性を学んだ紫紅は、さらに日本絵画の古い様式や固定観念を乗り越えようと、古今東西の絵画を熱心に研究します。この渡し場の風景も、南画のような伸びやかな筆遣いと、西洋画を思わせる明るい配色に、柔軟かつおおらかな彼の性格が大いに反映された作品に仕上がっています。

秋風五丈原 [1907年]

  • 膠彩、絹布
    165.0×112.4cm

[音声ガイド]

タイトルの五丈原は『三国志演義』に登場するの宰相が最期を迎えた場所です。この作品では赤く瞬く星の下、蜀の軍が馬車に乗った諸葛亮を中心に砂煙のなかを粛々と進む様子が描かれています。この諸葛亮、実は木でできた人形です。五丈原で諸葛亮が病没すると、蜀軍は遺言どおりに瓜ふたつの像を車に乗せ、本人が陣頭指揮を取っているかのように敵の目を欺きながら退陣したといいます。 大気の霞む表現はによるものです。は当時横山大観らが、西洋画に対する日本画の確立をめざすなか追究した、墨線を使わずに空気や光線を表現する技法でした。27才の紫紅はこの作品で、画家を志したときから身に着けたしなやかな描線に朦朧体を融合させ、三国志の有名な場面を描きあげたのです。

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