Collection

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菱田 春草 (ひしだ・しゅんそう)

[1874 - 1911 ]

鹿 [1909年]

  • 膠彩、絹布
    128.0×51.0cm

[音声ガイド]

秋の林にたった一頭で座り込んでいる鹿は、何を想い、どこを見ているのでしょうか。描きこまれた木立や落葉によって、鹿の孤独感がより強められています。丁寧に描きこまれた鹿の毛並みに、つい手を伸ばして触ってみたくなりますが、その瞬間に鹿は立ち去ってしまいそうな、気を許さない緊張感も画面に張りつめています。 1908年の春、春草は病のため視力が衰え、制作や飲酒を禁じられました。活動を再開できたのはこの年の12月に入ってからのことです。翌年には、静養先近くにあった東京代々木周辺の林をもとに、秋の情景を描いた名作がいくつも生まれました。木肌の表情や質感、木々の配置や空間を知りつくしたその場所を舞台に、この作品も描かれたのです。

春色 [1905年]

  • 膠彩、絹布
    167.7×64.0cm(表具サイズ 軸幅69.5)、70.9×49.4cm

[音声ガイド]

描かれているのは霞がかった淡い光に木々の輪郭が溶けこみ微睡みを誘う、現世とは思えない風景です。枝葉はいずれもか細く、地面も曖昧です。清涼感が満ちた幻想的な画面で唯一の焦点となるのは白い花で、そこに自然と眼が惹かれます。 当時菱田春草は、横山大観らとともに「朦朧体(もうろうたい)」と言われた、輪郭をぼかし色彩と明暗による絵画表現を模索していました。今でこそ朦朧体はその表現方法を指すものとして知られていますが、当時はむしろ非難めいた言葉でした。 国内では理解を得られなかった春草は1904年から1年半、アメリカやヨーロッパで大観と二人展を開催しました。《春色》もその時の出品作と思われます。この時異文化に触れた経験は春草にとって、日本美術における自らの絵画の役目を改めて考える契機となったのです。

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