[音声ガイド]
厚みのある角材をつなぎ合わせた上に、色を変えてギザギザとした形が描かれています。木目の調子が透けて見えるほど絵具が薄塗りのため、これらの形は投影されたイメージのように物質感がありません。 タイトルの「P.W.P.」は、「プラクティス・バイ・ウッド・ペインティング」の略で訳せば「木の絵画による実践」。その言葉どおり彦坂は、カンヴァスと違って、物質としての強さが際立った木を材料に使い、「実践」と呼ぶにふさわしく、形や図像を少しずつ変えながらこのシリーズを制作し続けました。しかも準備のために、膨大な数のスタディも手がけていて、まるで気の遠くなるような労働といった風情です。こうして彦坂は、当時主流となっていた観念的な作品に対抗して、愚直なまでに自身の制作のなか に具体的な手ごたえを取り戻そうとしたのです。