[音声ガイド]
この作品は、しばらくのあいだ誤って「犬と二人の子ども」と呼ばれていました。しかし、右下の人物は子どもというよりは、裸で、パレットと絵筆を持った人間、つまり画家自身に見えなくもありません。いっぽう左の人物は、このころバゼリッツがたびたび描いていた、心臓に顔がついたグロテスクな図像とよく似ています。赤いもみの木のようなかたちを背景にした羊のおしりの、はっきりと描かれていない「なにか」も、いかにも意味ありげに見えてくるでしょう。 羊はドイツ語で「Schaf」。「まぬけ」の意味もありますが、「創造する=schaffen」と音がよく似ています。この作品は、1958年に東ドイツから西側に移った若者が具象的なかたちに託しながら自らの創造を模索していた、その時期の一点です。