Collection

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エドヴァルト・ムンク (えどゔぁると・むんく)

[1863 - 1944]

魅惑 [1896年]

  • リトグラフ、紙
    47.2×35.8cm

[音声ガイド]

大きくうねる海岸線の前で男と女が見つめ合っています。背景は海と空がぼんやりと薄明 るいだけで、陸の部分は闇に溶け込んで黒一色です。海へと連なる白い塀によって強調さ れた遠近表現が現実感を失わせ、画面にある種の緊張感を与えています。ただ、この緊張 感の原因はそれだけではないようです。男女の姿をもう少し細かく見てみましょう。見つ め合う二人の目の周りは深く窪んだように黒く縁どられ、口は見当たりません。女の長い 髪は男へと伸び、二人をしっかりと結んでいるようです。魅惑というタイトルから、互い に惹かれ合っているようですが、充たされているようにも見えません。言葉も交わすこと ができず、お互いが自分の運命に諦めの感情すら抱いているように見えます。この作家に とって、男女の愛は人生を破滅へと導くものなのでしょうか。

接吻 [1895年]

  • エッチング、ドライポイント、紙
    32.8×26.3cm

[音声ガイド]

薄暗い部屋の中で男と女が抱き合い、口づけを交わしています。カーテンが開け放たれた 窓からは、向かいの建物や街路を行き交う人影も見えます。二人は一糸も纏わぬ姿で、男 は少し屈むようにして女の身体に腕を回し、女は身を預けるように男の肩に手をかけてい ます。互いの肌を密着させて口づけを交わす二人の顔は、溶け合うように一体化してし まっています。 市街の雑踏からは隔絶された密室で繰り広げられる、極めて私的で濃厚な情景。しかし、 暗く沈んだ室内とはいえ、外から覗き込めるような窓際で全裸で接吻するとは、とても現 実とは思えません。何かに取り憑かれたように愛を確かめ合う二人。まるでこの世には二 人しか存在しないかのようです。男女の愛とは、なにもかもを意識の彼方へと押しやって しまうのでしょうか。

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