Collection

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青木 野枝 (あおき・のえ)

[1958 - ]

原形質/豊田 2015 [2015年]

  • 鉄(コルテン鋼)
    240.0cm、 Φ550.0cm

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原形質とは耳慣れない言葉ですが、生物学で細胞内を構成し、生命活動の基礎となっている物質を言います。作家も、当然そのことを知ってのうえでタイトルに用いたのでしょう。とすれば、この作品の形態はアメーバのような生き物が自身の体を変形させながら運動している状態を切り取った姿のようにも感じられるでしょう いま、私たちが活動しているこの空間が、生物における細胞のような場であると考えたら、身の回りの情景はどのように見えてくるでしょうか。生命活動が続く限り、止むことなく続けられる極小器官の働き。私たち自身も、そして私たちが存在するこの空間のなかのあらゆるものが、けしてとどまることなく循環している。青木がイメージしているのは、そんな空間ではないでしょうか。

Untitled [1995年]


  • 250.0×100.0×100.0cm

[音声ガイド]

細く、しなやかに見える棒が幾本も重なり合って、円錐状にバランスをとりながら立ち上がっています。繊細な雰囲気を装ったその彫刻は、しかし近づいてみると硬く荒々しい鉄からできていることが分かります。一本一本の棒は、大きく分厚い鉄板をバーナーの炎で溶断して切りだされたものです。その作業は、並ならぬ労力を要することでしょう。 いわゆる抽象彫刻としての形態を持つその作品は、幾何学的な要素をまといながらも、それが生み出すであろう安定感というイメージをすり抜け、彫刻とそれに連なる空間との繊細なバランスによって成り立っています。青木の彫刻は、それ自体が存在することによって生じる彫刻の内と外の空間を相互に浸透させ、その場に緊張感を生み出しています。

Untitled [1984年]


  • 180.0×120.0×80.0cm

[音声ガイド]

大きな鳥籠のような形態、あるいは鐘を思わせるシルエット。どこか懐かしさや親しみやすさがあります。彫刻にとって重要とされてきた重量感、量塊性といった性質も具えてはいません。この彫刻は、その内に入り込めるような、すり抜けることができるような、そんな感覚を抱かせます。作品と空間が関係し合い、浸透し合っていると言い換えてもいいでしょう。もっともよく見れば、表面には三角形の突起が無数にあって、それらが周囲の空間に楔のようにくい込んでいるとも感じられます。この感覚は、作品を最初に眺めたときに感じた親しみやすさとは相容れないものです。青木の彫刻は作品と空間、しなやかさと鋭さ、それらの相互作用あるいはせめぎ合いのなかに立ち上がっているようです。

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