[音声ガイド]
大きくて、重い、しかしこれは20ページからなる一冊の本です。 タイトル「重い水」は原子炉で用いられる減速材を意味します。作者のアンゼルム・キーファーは自分のスタジオに原子炉を模した構造を設け、そこで撮影した写真のネガポジを操作したり、その写真に鉛の板や銀の箔などを張り付けたりしながら一冊の本にまとめました。こうした制作方法をとおして、作家は、目に見えない物質が反応し、エネルギーを生み出す、その営為自体について思考を深めようとしています。 この作品は1986年のチェルノブイリ原発事故の翌年に発表されました。2011年の福島の事故を経たわたしたちにとって、この重い本はますますその重みを増していると言えるでしょう。