[音声ガイド]
微妙に色味の異なる金色だけで構成された4枚のカンヴァス。 丹念にむらなく塗られた画面は均質で、抑制された平面的な描写は抽象画を思わせます。しかし、難しいことを考えずに素直に見れば、塗り分けられた面は、床、天井、壁であり、空っぽの部屋のようです。事実、これらは、アトリエ内を様々に切り取って遠近法を用いて描いただけのものなのです。 20世紀のモダニズム絵画は、平面性や均質性、反復と差異を手掛かりに、「何を描くか」よりも「どう描くか」を問題としてきました。秋吉は、それを逆手に取るように、あえて部屋という具体的な対象を描くことで、「何を描くか」と「どう描くか」とを両立させながら、近代以降の絵画の探求そのものをテーマにしているのです。 さらに色彩の問題に関しても、色が光によって様々に調子を変え、隣り合う別の色との関係によって、 認識できるということを伝えるため、金色だけを使って(光を)表現しています。