髙橋節郎館オーディオガイド

髙橋節朗館

髙橋節郎(たかはし せつろう)

髙橋節郎(1914-2007)

髙橋節郎

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髙橋節郎は1914年に長野県に生まれました。東京美術学校(現在の東京藝術大学)で漆芸を学び、以来約70年に及ぶ制作活動において新たな表現を追究したことで知られています。
当初、髙橋は鮮やかな色漆を用いた作品で頭角を現します。様々な表現技法を試みた後、艶やかな漆の黒と髙橋独特の技法である「鎗金(そうきん)」が織りなす、幻想的な作品世界に到達しました。晩年になっても屏風やパネルの大作を、さらには独自の立体作品を手がけています。墨彩画や書も数多く残すなど、2007年に亡くなるまで多様な作品を生みだしました。伝統的な漆芸の表現に、自由で現代的な作風を取り入れた髙橋の作品は国内外で髙い評価を受けています。その功績により1997年には文化勲章を授与されました。

髙橋節郎館(たかはし せつろう かん)

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1984年に豊田市で開催された個展がきっかけとなり、髙橋節郎本人から多数の作品が豊田市に寄贈されました。「髙橋節郎館」は、同じく谷口吉生による建築の豊田市美術館とともに1995年に開館しました。ひとりの漆芸家の作品を常設展示する国内でも数少ない美術館です。

大小2つの展示室では、髙橋の特徴的な技法である「鎗金」による屏風やパネル作品を中心に、漆芸と並行して制作された墨彩画や漆版画なども展示しています。また、金銀、螺鈿の装飾が施された楽器(グランドピアノやハープ)もご覧いただくことができます。館内には展示室のほかに、庭園の四季を楽しむことができるラウンジや、ワークショップルームがあります。

作品について

鎗金(そうきん)

鎗金(そうきん)

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屏風やパネルの作品にみられる、ときに強く鋭く、ときに繊細ではかない黒と金の図像は、髙橋節郎独自の「鎗金」という技法によって表現されています。「鎗金」は、艶やかな黒い漆塗りの板をカンヴァスに見立て、いちど刻んだら変更はできない線を刃物で表面に刻み、そこに金箔やプラチナ箔を貼り込むことで、画面に豊かな表情をもたらす技法です。

屏風(びょうぶ)

《星座創記》 1975年

屏風(びょうぶ)

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髙橋節郎は屏風やパネルの漆黒の画面に、幼少時に彼が目にした信州の山々や星空、花や鳥などの豊かな大自然、そして古代へのロマンをかきたてる古墳や化石を題材にした幻想的なイメージを刻みました。
持ち運びが容易で、場所に合わせて展示することができる屏風を、髙橋は「動く壁画」と呼びました。 髙橋節郎館の展示ケースでは、パネルを180度に開いて、宙に浮いたように展示することができます。この工夫によって、金色に輝く太陽や月、大鳥などが天空に浮かぶ幻想的な屏風のイメージはさらにその印象を強めています。

童子神(どうじしん)

《童子神》 1995年

童子神(どうじしん)

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髙橋節郎館で常設展示されている《童子神》は、髙橋にとって最大の木芯乾漆(もくしんかんしつ)の作品です。髙橋節郎館を含む豊田市美術館の敷地には、豊田市で最も古い歴史を持つ童子山小学校が建っていました。髙橋節郎は移転する小学校の児童や卒業生の心情を想い、実際に校舎に使われていた柱や梁を使って、千手観音のイメージを含ませた《童子神》を制作しました。この作品には、子どもたちが、髙い理想と勇気、そしてやさしい心をもって健やかに成長してほしいという祈りが込められています。

立体作品

《地久大恵》 1993年

立体作品

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80歳を超えてから制作された髙橋節郎の立体作品は、心に浮かぶイメージから生まれたといいます。生まれ育った故郷の山や森に対する髙橋のあこがれを思い起こさせる作品も多く、見る者の想像をかきたてます。 髙橋節郎館では、髙橋の最大の木芯乾漆(もくしんかんしつ)の立体作品《童子神》を常設展示しています。また館のまわりでは、アポロ11号の宇宙飛行士が月面に降り立った印象を作品にした《月面一歩》や、《童子馬》といった石の彫刻作品もご覧いただけます。

楽器

楽器

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宇宙の悠久の美と調和は、髙橋節郎が追い求めた芸術世界の原点のひとつです。音楽愛好家でもあった髙橋は、楽器に黒漆と金銀、螺鈿の装飾を施すことで、宇宙の美と調和を表現しようとしました。
 髙橋節郎館が開館した1995年、装飾楽器の第一作目にあたるグランドピアノの《宇宙紀行》が完成しました。続いて1999年から2005年の間にハープの《銀河饗奏》、フルートの《金河》《銀河》、そしてクラリネットの《ベガ》《アルタイ》が制作されました。年に数回、これらの楽器を使ったコンサートが開催されています。なお「ベガ」と「アルタイ」とは七夕の「織姫星」と「彦星」のことです。

漆版画(うるしはんが)

《 触 》 1975年

漆版画(うるしはんが)

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髙橋節郎はインクの代わりに漆を使う版画である「漆版画」を数多く残しています。ガラスや石盤の上に描いた有機的な模様を背景に、木や厚紙で作った凸版によって図柄を刷りあげるため、版画でありながら一枚いちまいイメージが異なります。 髙橋が漆版画に集中的に取り組んだ1950 -60年代は、漆のあらたな可能性を求めて様々な表現を試みていた時代です。このような実験的な精神がのちの独創的な表現へとつながっていくのです。

墨彩画(ぼくさいが)

《峻 岳》 1989年

墨彩画(ぼくさいが)

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長野県出身の髙橋節郎は幼少時代から親しんだ故郷の山々、また京都や奈良などの旅先で目にした風景を多く描き残しています。東京美術学校(現在の東京藝術大学)時代に、髙橋は日本画家の下村観山や横山大観の作品に感銘を受け、墨画の魅力にとりつかれたといいます。 漆芸は緻密で繊細な作業の積み重ねであり、修正するのも簡単ではありません。そのため、心の赴くまま自由に筆をふるうことでうまれる墨彩画は、髙橋にとってよい気分転換になったといわれます。

クラフト

《ゴールデンデリシャス》1953年

クラフト

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第二次世界大戦後、美術と産業との間で新しい表現と役割を模索していた工芸界では、「クラフト運動」が起こりました。髙橋節郎も気鋭の工芸家やデザイナーたちとともに団体を結成し、「工芸的素材を以って自由な創造をめざすと共に、産業工芸に於けるデザインの水準を髙める」ことを追求しました。髙橋はドラム缶を作った後に残る金属板を型抜きして、化学塗料を焼付け、色鮮やかで、新しい時代にふさわしい様々な日用品をデザインしました。また近代いけばなの流派、草月流と提携し、木製花器のデザインも手掛けました。

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